お母さん
わたしのお母さんは、「ちゃんとした人間」で、「常識を持っている人間」らしい。
わたしは、「ちゃんとした人間」とか、常識とか、よくわからないので、お母さんが、本当にちゃんとした人間なのかは、よくわからないけれど、いつも自分のことを、ちゃんとした人間で常識を持っていると、言ってくるので、そうなんだろうとおもう。
いつも、「ちゃんとしてない」とか、「常識がない」と、怒られていた。
わたしは、高校生くらいの時から、ちゃんとした人間になろうと、頑張ってみたけど、結局、ちゃんとした人間にはなれなかった。
ちゃんとした人間になれないどころか、きがついたら、好き勝手に音楽つくる以外、なにもできない人間になっていた。
一昨日、お母さんが、なんか話したいことがあるなら言いなさいというので、「他人からバカにされている気がしてしんどい」といったら、「わたしの方がバカにされている。あんたなんかより、もっと酷い目にあっている。」と、言ってきた。
なんでわたしの話をきいてくれないのと言うと、「聴いてるでしょう!!」と、大声で言ってきた。
きいてないよと言うと、「もういいよ!」と、ものすごい顔をして大声でいって、部屋から出ていった。
お母さんは、わたしの話をまじめに聞いてくれたことは一度もない。
聞いているけれど、聞いてない。
病院に入院したいといったけれど、
金がむだになるだけだと、言われただけだった。
だれかを傷つけるくらいなら、死んでしまいたいと泣いて言うと、
くだらないと、言われただけだった。
じゃあ、23日のライブが最後だから、みにきてよといったら、
え。なんで。と露骨に嫌そうな顔をして、
あなたの音楽は、部屋からもれて聴こえてくる音を聴いてますと、いうだけだった。
さっき、台所で、お茶をのんでいたら、
母が、「明日、大雨だってー!」と、独り言にしては、大きめの声で、言っていた。
わたしは、頭がどうにかなりそうになるのを、こらえて、部屋にもどった。
わたしは、母のすべてが大嫌い。
血が繋がってると思いたくない。
けれど、断られるにきまってるのに、ライブを誘ったのは、
「ちゃんとしてない人間でも、ちゃんとした音楽は作れるんだ」と、証明したかった。
わたしは、まだ、そんな、青臭いことを、考えていたんだなとおもって、
自分のことが、ほんとうに、みっともないヤツだと思って、
その晩は、何時間も、泣いていた。
今朝起きて、ライブの演出を、ちょっと変えた。
母は、来ないので、どうせ来ないなら、好き勝手にやろうと、おもって、半日かけて、とあるものを作った。
その、とあるものがさっき完成して、
とあるものを、なんどか確認すると、なんかすごく、ほっとした。
そのとあるものを、もし、母がみたら、
くだらないと言うとおもう。
死にたいと言っても、くだらないと言うし
実際に死のうとして病院に運ばれたら、あんたの病院に付き添わなきゃいけなくて、わたしは朝ごはんを食べてないんだといってくるし
わたしの音楽も、母にとっては、聴くに値しないものなのだとおもう。
母は、星野源とか、AKB48の音楽は、きちんときくけれど、私の音楽はきかなかった。音源をわたしても、ほとんど聴いてなかった。
母は、ちゃんとしてる、常識のある、そういうものが、すきだから。
わたしは、最近、おもちちゃんの面倒をよくみてる。
おもちちゃんに、「ちゃんとした猫にならなくてもいいんだよ。外に出る以外は、すきなことしてね。ときどき、お昼寝したり、わたしを応援してね。」と、話しかけている。
自分が言って欲しかった言葉を、おもちちゃんに言うと、
ほっとして、涙がでて、安心するんだ。
おもちちゃんは、ねこだから、ライブには来れないけど、
たぶん、明日、ときどき応援してくれるかもしれないし、わすれて、寝てるかも?
でも、わたしは、どっちでも、いいんだ。