音楽はすごい
わたしは、中学、高校の頃、同年代の男子がすごく嫌いだった。
女子のこともあまり好きじゃなかった。
先生のこともあまり好きじゃなかった。
わたしは、新学期のはじめ頃は、とりあえず目立たない女子のグループに一応、属してみていたけど、馴染めなかったから、しばらくすると、一人でお弁当を食べたり、誰もいない教室でぼんやりしたり、廊下を何往復も歩いてみたり、校庭の隅っこで、小さな石やアリを眺めてたりしてた。
だれかに、いじめられてたわけではないけど、
いつもひとりぼっちで、疎外感を感じていて、それが結構しんどかった。
学校は行きたくなかったけど、学校に行きたくないと親に言ったらぶん殴られるだけなので、仕方なく行ってた。
高校の頃は、吹奏楽部に入って、練習を頑張ってたから、一人で時間を潰したりすることはなくなった。
でも、部活に入っても、やっぱり友達はできなかった。
暇な時は、楽器がしまってある倉庫に勝手に入って、大きな打楽器に掛けてある毛布を勝手に使って昼寝したりしてた。
友達がまったくできない私って、異常なのかなとか、思い始めたけど、その頃に、友達ができた。
それは、iPodっていう名前のお友達。
iPodには、たくさん音楽を入れることができて、イヤホンをつければ、いつでも、いろんな音楽を聴くことができて、わたしの大切な友達だった。
いまは、iPodはもう使ってないけれど、わたしは、iPodと音楽にはすごく感謝しているんだ。
大学に入って、すぐ、バイトをはじめた。
遊園地のスタッフの、時給900円のアルバイト。
わたしは、給料が入ると、横浜の西口の地下街にあった、中古レコード屋さん (いまはもうない)に行って、気になってるCDを何枚か買って、家に帰ってiPodに入れて、聴いていた。
その時間がすごく好きだった。
目を閉じて、好きな音楽を聴くと、なんか、別の世界にいるような気がして、目を開けると、ちゃんと自分の部屋に戻ってくるけど、意識は別の世界へ行っているというか、そんな感じ。
大学では、何人か仲良くなった人がいたけれど、ひとりでゆっくりと音楽を聴いてる時は、やっぱり幸せだった。
わたしは、音楽には、すごく力があると思ってる。
よく聴いていた音楽を聴くと、
その時の気持ちを思い出すし、その時悩んでいたことを思い出すし、色んなことを思い出す。
時々、はずかしくなったり、ちょっと切なくなったりもするし
なんだか心がザワザワとするときもあるし、忘れていたことを思い出すときもある。
それがすごく心地いいから、わたしは音楽が好き。
高校へ向かう電車の中では、ナンバーガールをよくリピートして、聴いてた。
いま、ナンバーガールを聴くと、通学で使ってた、JRの電車の風景とか、駅の人混みとか、高校へ向かう途中にある、長い坂道を、かったるいなぁと思いながら、とぼとぼ歩いてた時のこととか、思い出す。
よく考えてみると、それって結構すごいことなんじゃないかなと思う。
好きな曲のメロディーとか、歌詞は、お守りみたいにしまっていて、時々、取り出して、ほっこりしているんだ。
音楽はすごい。